日本刀の世界において、「蜂須賀虎徹」は名刀中の名刀として知られています。徳島藩主・蜂須賀家に伝来したこの名刀は、長曽祢虎徹興里による真作であり、刀剣愛好家や歴史ファンの間で長年憧れの的でした。
これまで個人蔵とされ、一般公開の機会がほとんどなかった蜂須賀虎徹が、2025年6月、宮城県大崎市で開催される「見どころ学べる!目で観る刀の教科書展」にてついに展示されることが決定しました。
本記事では、蜂須賀虎徹の持ち主や伝来の歴史、そして展覧会での見どころや刀剣文化の魅力について、徹底的にご紹介します。
蜂須賀虎徹とは?── 名工・長曽祢虎徹の傑作
【刀剣情報/蜂須賀虎徹】
— 日本刀剣博物技術研究財団 (@hakubutugizyutu) May 4, 2025
🌸蜂須賀虎徹🌸
刀 銘 長曽祢興里入道乕徹
(金象嵌)寛文五年乙巳霜月十一日
貳ツ胴截断 山野加右衛門永久(花押)
金象嵌の脱落もなく、茎の保存状況も良好です。
財団の仕上げにより刀身もご覧いただきやすくなりました!#蜂須賀虎徹#刀の教科書展 pic.twitter.com/KZmNvo3cl0
蜂須賀虎徹は、江戸時代中期の刀工・長曽祢虎徹興里(ながそねこてつおきさと)が手がけた名刀です。虎徹は元々甲冑師でしたが、40歳を過ぎてから刀鍛冶に転身し、その後「虎徹」と号して江戸で活躍しました。
虎徹作の刀剣は、切れ味と美観の両面で高く評価され、現存する真作はごくわずかです。特に蜂須賀虎徹は、その中でも傑出した名品とされ、刀剣界でも「虎徹の最高傑作」と称されています。
蜂須賀虎徹の特徴として、茎(なかご)に「長曽根興里入道乕徹」の銘が刻まれていること、箱型の「ハコ虎」銘、1665年(寛文5年)11月11日付の山野加右衛門永久による「弐ツ胴截断」金象嵌截断銘などが挙げられます。
刀身は庵棟、板目肌、湾れ刃文に互の目が交じるなど、虎徹らしい華やかさと実用性を兼ね備えています。
蜂須賀虎徹の持ち主と伝来の歴史
蜂須賀家── 戦国から明治に続く名門大名家
蜂須賀家は、戦国時代の武将・蜂須賀小六(正勝)を家祖とし、豊臣秀吉の四国征伐で阿波国(現在の徳島県)を与えられた名家です。
以降、江戸時代を通じて徳島藩主として栄え、明治維新後は華族・侯爵家となりました。蜂須賀家は、文化財や名刀の収集にも熱心で、家の威信を示すために数々の名品を所蔵していました。
蜂須賀虎徹の購入と伝来
蜂須賀虎徹が蜂須賀家に伝来したのは、3代藩主・蜂須賀光隆(みつたか)または4代藩主・蜂須賀綱通(つなみち)の時代とされています。
江戸時代中期、蜂須賀家は徳島藩を治める大名家として繁栄し、名刀を家宝として迎えることは家の格式を高める重要な意味を持っていました。蜂須賀虎徹は、以降歴代藩主に受け継がれ、蜂須賀家の象徴的な宝刀となりました。
「蜂須賀虎徹は昭和時代まで蜂須賀家に伝来したよ。」
明治維新後も蜂須賀家は侯爵家として存続し、名刀の数々を所蔵し続けましたが、昭和初期の経済的事情などから刀剣類の一部を手放すこととなり、蜂須賀虎徹もその流れで個人蔵となったとされています。
「昭和名物」への認定と現代までの変遷
蜂須賀家を離れた蜂須賀虎徹は、1971年(昭和46年)に「昭和名物」として公式に認定されました。
これは、昭和期において特に優れた刀剣を選定・顕彰する制度であり、蜂須賀虎徹がいかに高く評価されているかを物語っています。
現在も個人蔵とされていますが、その詳細な所在や持ち主については非公開となっています。
「1971年(昭和46)2月16日、昭和名物の審査。昭和名物となる。」
「見どころ学べる!目で観る刀の教科書展」で蜂須賀虎徹がついに展示!
2025年6月7日(土)から6月15日(日)まで、宮城県大崎市役所市民交流エリアにて「見どころ学べる!目で観る刀の教科書展」が開催されます。
今回、ついに蜂須賀虎徹の展示が決定し、刀剣ファンや歴史愛好家はもちろん、一般の来場者にも大きな話題となっています。
この展覧会は、全国屈指の刀剣コレクションを誇り、過去にはギネス世界記録となる日本刀最多展示数を達成したこともある一大イベントです。
重要美術品「大倶利伽羅広光」や「名物 乱藤四郎」など、名刀が一堂に会する中で、蜂須賀虎徹の実物が一般公開されるのは極めて貴重な機会です。まさに歴史的瞬間と言えるでしょう。
展覧会の開催概要とアクセス情報
- 会期:2025年6月7日(土)~6月15日(日)
- 会場:大崎市役所市民交流エリア(宮城県大崎市七日町1番1号)
- 主催:一般財団法人 日本刀剣博物技術研究財団
- 入場料:1,500円(税込)
- 展示予定刀剣:約150振り(重要美術品・名物刀多数)
- アクセス:JR古川駅から徒歩約10分、駐車場あり
展示期間中は混雑が予想されるため、事前予約や早めの来場がおすすめです。また、会場では刀剣の見方や歴史を学べるパネル展示や、専門家による解説イベントも予定されていますので、初心者からマニアまで幅広く楽しめます。
蜂須賀虎徹の見どころ ── 美と歴史の結晶
蜂須賀虎徹の最大の見どころは、その圧倒的な美しさと、蜂須賀家伝来という歴史的背景です。
刀身の細部に至るまで虎徹の技術が凝縮されており、刃文の美しさや茎の銘、截断銘の金象嵌など、見どころが満載です。蜂須賀家の家紋「左万字」が刀剣ごとに設定されている点も、歴史ファンにはたまらないポイントです。
さらに、蜂須賀虎徹は「刀剣乱舞」などのメディア展開を通じて若い世代にも広く知られるようになりました。
ゲーム内では蜂須賀家伝来の誇りや、真作虎徹であることへの強いこだわりがキャラクター性として描かれ、刀剣文化の新たな担い手となっています。
刀剣文化の魅力と現代への継承
日本刀は単なる武器ではなく、美術品・工芸品としての価値や、歴史・文化の象徴としての側面も持っています。
蜂須賀虎徹のような名刀を見ることで、当時の技術や美意識、そして持ち主であった蜂須賀家の歴史に思いを馳せることができます。
近年は刀剣ブームの高まりを受け、展覧会やイベントが全国各地で開催され、刀剣文化の裾野が広がっています。
蜂須賀虎徹のような名刀が一般公開されることで、より多くの人々が日本の伝統文化に触れ、歴史への理解を深めるきっかけとなるでしょう。
まとめ:蜂須賀虎徹の持ち主と現代に輝く名刀
蜂須賀虎徹は、徳島藩主・蜂須賀家に伝来した名刀であり、長曽祢虎徹興里作の真作として刀剣史に輝く存在です。
昭和初期まで蜂須賀家の家宝として大切にされ、現在は個人蔵となっていますが、2025年6月の「見どころ学べる!目で観る刀の教科書展」でその姿を目にできる貴重な機会が訪れます。
刀剣の美しさと歴史、そして蜂須賀家の栄光を体現する蜂須賀虎徹。ぜひこの機会に、実物を目の当たりにし、日本刀の奥深い世界と日本文化の素晴らしさを体感してください。

